「モノを大切にできる人は、人を大切にできると思う。」 僕が幼い頃から慣れ親しんだ言葉です。 それでは大切にできるモノ、とはなんだろう。 そう思いながら僕は日々制作をしています。 さて、今回は以前掲載した記事「Tanning of Japanese Leather #1」に引き続き、LBKで使われる革の流れをご紹介します。 唯一無二のデザイン、伝統工芸を元に製作された道具、日本の伝統技術などを現代版にオマージュし新たな概念から生み出されるLBKの革小物。 その感動的なストーリーはもちろん「革」という素材にも込められています。 三重県にある獣肉加工処理・販売「かじか」の中森さんを訪ねてきました。 ここでは猟友会や地元のハンターにより害獣として駆除された野生の獣を食肉に加工しています。 一般目線で見ると「採った肉は自分で捌いて売ればいいじゃん。」と思いますが、衛生関連の法律やいろんな決まりごと故、国から認可を受けた施設ではないと肉の販売はできないのです。 実際に見てみると、こんなでかい動物を自宅で捌くってのもかなり大変だと思いました。 様々な設備の整った工場内で動物の解体を行います。 見た事あるような無いような道具で皮と肉を分けます。 従来の食肉加工処理場での本来の目的は「肉を加工する事」なので皮は廃棄される事が一般的ですが、「かじか」さんでは綺麗に皮を取り除き、鞣して革にする職人さんに届けています。 このような皮や革に従事する人は昔から存在し、それに伴い道具も発展してきたかと思いましたが、実は未だに「これ」といった革を剥ぐのに最適な道具は定着していないようです。 こちらでは日本刀を加工し、反りや形状を変えた特注の道具を使用していました。 これにはより一層、僕も目を光らせました。 何を隠そう、僕の趣味のひとつは日本刀の研ぎです。 極力もったいない部位はなくそうと、骨も有効活用しています。 装飾品(皆さんのご自宅の暖炉の上にもあるやつです)はもちろん、鹿の骨は道具の柄(え)やグリップにも使われるので、きれいに骨やツノを洗い出します。 ちなみに鹿は年に一回、ツノが取れるそうです。 知ってましたか?僕は知りませんでした。 山を歩っているとよく落ちているそうです。 ちなみに落ちてたやつは白っぽくなるそうです。 次回の山ツーリングの際にはしっかりと目を凝らそうと思います。 「革」という素材は僕のアート作品へのコンセプトと共通する点が大いにあります。 長い歴史やルーツが込められた素材であり、決して一人では成し得ない素材。 「人を生かし、人に生かされる。」 時代と歴史を携えるLBKの革アイテムが、その役割のほんの一部でも担えればと思います。
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「優しさと強さ」 -Strength lies behind kindness- <シザーズケース / scissors holder> Y様 ※再生産不可 material: コンビ鞣し牛革(鎧染め)、タンニン鞣し牛革(三年柿渋染)、真鍮(手打ち鍛造、Fiocchi)、銅(リベット)、鹿人工腱(糸) 僕が普段お世話になっている美容師の方へ、ご主人からのご注文でした。 唯一無二オーダにて作成させていただいたシザーケースです。 僕の不精なスタイルをいつも驚くセンスと技術で感動的に変身させてくれます。 僕自身、表現者として、手仕事に携わる者として、普段から人の仕事もじっくり観察します。 と言っても専門的な事はあまりわからないので、その人の「心」を感じとると言った方が適切かもしれません。 時にそれは美しかったり、カッコ良かったり、面白かったりと、様々な感動を得るわけですが、今回のお客様はご夫婦とも僕が尊敬する方です。 そんなお二人の想いに僕の想いを込めて、一つのアイテムを作成させていただきました。 使い慣れた道具やその周りのものを作成する時はいつも大変です。 なぜならその人のクセや取り回しに合わせて作成する必要があるからです。 利き手、サイズ感、動き方などを考慮して極力慣れまでの時間を要さないように努めます。 そして何よりモノとしての魅力、ずっと寄り添いたいと思っていただけるデザインと構造を生み出します。 未知の業種故、どんな動き方や使い方をするのかがわからず、何度も観察し、色々と調べ上げ、実際にサンプルを作り、スキバサミや櫛などを入れてイメージしてから本製作に入ります。 今回はもともとお客様がお使いのケースを実際にこちらで復元作成し、その角度や機能に極力近づけつつも機能的な改善点を見つけて新たにデザインを作りました。 刃先に残った髪の毛がケースの中に溜まるという事も知り、ケースの中をしっかりと開いて掃除ができるようになっています。 そのギミックはLBKの得意とする立体的縫製による蝶番式で作りました。 腰への負担を減らしつつもしっかりと馴染むよう、しなやかながらも経年変化の少ない革を選び独自の漆染めにて製作しました。 強度も高く美しさが際立つ真鍮無垢のナスカンは取り外しやすくしっかりと本体を留めます。 各要所には一点モノのオリジナルで手打ち鍛造にて仕上げた金具を使用しています。 そんな革パターンから金属素材にいたるまでの特別レシピは社外秘でしっかりと保管してあります。 メンテナンスはもちろん、ポケットの追加などのカスタム、破損の際の修理はどんな状態になっても可能です。 今という時代は本当に選択肢が増え恵まれていると思います。 それに伴い、そこに行き着く手段も豊富にあります。 髪を切りに都市から金沢に来る事も可能です。 感動のできる美容院をお探しの方は是非。 Salon de OXY 〒920-0036 石川県金沢市元菊町17-53 アクセス : 金沢駅各線から徒歩約14分 共用駐車場 : 5台 もう少し南に行った小松市にはLBKの工房&ショップもありますので併せて是非。。 |
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Kei Arabuna /ケイ・アラブナ Archives
June 2022
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